仏和大辞典(dictionnaire général français-japonais)白水社の古本を買いました。
初版1981年(昭和56年)伊吹 武彦 編著他4名、
絶版なので、古本になります。
もう少し付け加えると、「除籍本」です。
図書館がいらなくなった書籍のことを「除籍本」と言います。
某大学の除籍本でした、大学の図書館に所蔵されていたので、
もちろん、使用感や若干のページに折れはありますでも、程度はまあまあです。
古書店の評価は「可」でしたが、個人的な印象では「良」です。
お手軽な価格で手に入れることができて、大満足です。
この「仏和大辞典」を買ってから、分かったことが2つあります。
1、白水社仏和大辞典の成り立ちと特長
2、アプリ「小学館ロベール仏和大辞典」との違い
分かったこと、その1
まず、この「仏和大辞典」の成り立ちについてです
仏和大辞典の「序文」によると、昭和32年8月1日に、白水社から伊吹さんに依頼があった。
伊吹さんが受諾したのは、昭和32年8月17日だった。
それから、編集メンバーの構成を白水社に相談、正式スタートは昭和32年9月14日。
それから、完成までに、24年近くを費やした。
太平洋戦争前に、伊吹さんには「模範仏和大辞典」(白水社)の大改訂の計画があって、編集作業に取りかかったが、戦争の激化により立ち消えになったまま。
ちなみに、「模範仏和」は5年で完成したらしい。
今回の「仏和大辞典」の編集作業が遅れた理由として、最近10数年(昭和56年当時)に出版されたフランスでの辞書を参考にしていたせいである、と書いてある。
他にも、編集メンバーがフランスに渡ったり、病気になったりもしたようだ。
この辞典の特長は、各単語を立体化すること
1、単語を文脈で捉えること
2、各単語のいくつかの意味を別個のものとしないこと。
具体的には、比喩的に用いられて新しい意味を持った時は、「意味を広げて」と表記し、
逆に狭めた場合は、「意味を限って」と表記した
3、語義にできるだけ補足的説明を入れた
4、一つの単語が持つ語義の後に、可能な限り同義語だけでなく、有効と思われる場合は反意語を付け加えた。
この同義語反意語から、語義が浮かび上がると、考えての対応であった
5、同義語の異同弁を解説した
「異同」とは、文章を比較して。違いを見つけること。
「弁」は、「弁別」を約したものだと、思う。
「弁別」とは、違いをはっきり見分けること。
こういうアプローチで、「仏和大辞典」では、語義の真髄に迫ろうとしている。
そのことを各単語に対する「全方位的」なアプローチと名付けている。
白水社仏和大辞典の「序文」には、一つの単語以外にも、「連語」で調べることも意図していることが記載されています。
2、アプリ「小学館ロベール仏和大辞典」(1988年初版)との違い
あくまでも、現時点でのやり方です、この先変わっていく、と思います。
まず、「小学館ロベール仏和大辞典」は、現用主義がテーマです。
「現用」とは、現在、用いられていること、です。
現代のフランス語を理解するための辞典ということです。
最初に買った仏和辞典は、旺文社「プチ・ロワイヤル仏和辞典」第4版(2010年)でした。
この「第4版」には、「CDーEXTRA」が付属していて、パソコンにインストールすることで、
でパソコン上で、検索ができました。
デジタル「検索」は手軽で、ピンポイントですから、効率は良いです。
でも、なんか物足りません、スクリーンの情報は記憶に定着しません。(個人の感想です)
「紙」の辞書で育ったので、「紙」の辞書の良さを知っています。
例えば、調べた単語の近くの別の単語が目に入って、余計な時間を費やしたことがとてもよくありました。
効率は、たしかに悪いかもしれませんね、でも、それは無駄な時間ではない、と信じてます。
アプリには不満がありませんが、「紙」の辞書が欲しくなりました。
どうやら、持って生まれたコレクター気質がぶり返しています。
「プチ・ロワイヤル仏和辞典」の後に、「ロベール・クレ仏和辞典」(初版2011年)とラルース「やさしい仏仏辞典」復刻版(初版1978年)を購入しています。
「ロベール・クレ仏和辞典」は、フランス語を外国語として学ぶ学習者への配慮が売りです。
残念ながら、使いこなせてないです。
ラルース「やさしい仏仏辞典」は、フランス語中級を意識して、避けて通れない「仏仏辞典」の入門として、購入しました。
まだまだ、使えていません。
※ラルース「やさしい仏仏辞典」の前書きを読みながら、この辞書に取り組むタイミングが来たことに気がつきました、いつか、記事にできれば。
紙の辞書なら、停電になっても、使えるのも大きいメリットです。
理由1
とにかく、「紙」の辞書が欲しい。
どうしても、ネットで参考意見を探してしまいます。
信頼している「北鎌フランス語講座」で、「プチ・ロワイヤル中辞典」(第1版)を推していたので、検討しました。
文法の解説が詳しい、という点が検討のポイントでした。また、ハンディサイズなのも良いです。
でも、白水社「仏和大辞典」を選びました。
なぜ、白水社「仏和大辞典」なのか?
あるとき、この大辞典が仏文学や仏人文系に偏っている、という批評を読みました。
この大辞典の特徴が一般向きではないからこそ、自分には合っていることに気がつきました。
ご存知のとおり、フランス語の意味は、文脈で変わります。
「baguettte」は、一般的には「棒」ですが、
文脈によっては、「杖」になったり、食べる「パン」になったり、「指揮棒」になったりします。
おそらく[baguette]は、抽象的に棒状のものが、本来的な意義なのでしょう。
この文脈なら、この意味になるという考え方をするということです。
だから、「杖」になったり、「パン」になったり、「指揮棒」になるのです。
まさに、白水社「仏和大辞典」が、単語の意義を文脈で捉えようとしている考え方に一致するのです。
初めのうちは、単語の意味を一義的に覚えることで、精一杯です。
やがて、フランス語の学習が進むと、単語が実は抽象的で、文脈によって意味を変えることに気がつきました。
また、皮肉や反語的な意味を持つこともあるようです。
「フランス語沼」ともいうべき事態が存在するのです。
だから、フランス語は面白いのです。めんどくさいとも言います。
分かったことその2
「小学館ロベール仏和大辞典」は、素晴らしい辞典です。
紙の「小学館ロベール仏和大辞典」を検討しましたこともあります。
図書館で現物を確認したところ、判型(B5)が大きくて読みやすいのです、開くとB4です。
白水社「仏和大辞典」はとても分厚いのですが、判型(A5)が小さいので、開いてA4です。
参考までに。
「小学館ロベール仏和大辞典」の「現用主義」は良い点でもあり、裏目にも出ます。
現用主義的な視点からこぼれたものを補完してくれることを期待して白水社「仏和大辞典」を購入しました。
重くて大きい辞書はやはり使い回しが正直大変です。
場所を取るので邪魔にさえ、感じています、現代的な生活には縁遠いものです。
しかし、アナログの紙の仏和大辞典を迎えるような生活も面白い、と思えるような年齢にもなりました。
この仏和大辞典とも紙の辞書とも長く付き合っていきたいです。
コメントを残す