講談社現代新書540「翻訳読本」著:別宮貞徳を読んでます。
ここで書きたいのは、「古い本」をあなどらないこと。 これは、自分への戒めです。
どういうことかというと、「出版年or新しい本は、古い本に勝る」という、これまでの自分の 考えを改める、ということです。
むかしから、新しいこと、新しい考えは、過去の問題をアップデートしているから、新しいも のが「良い」と思ってました。
どうやら、そうではないようです。
そのことを「翻訳読本」から、学びました。
この本は、1 979年のものです。
いまさら感が強いですが、結局「いくつになっても、学びがある」ということです。
この本にたどり着くのに、 2つの本をはさんでいます。
ご承知のとおり、 いまフランス語を独学しています。
「読む」ためには、まず、「文法」です。
フランス語原書を読みはじめたころから、フランス語文法書を買いはじめました。
中性代名詞を始めとした代名詞を「あれ、これ、それ、彼、彼女」としたのでは、文の 意味がわかりません。
本題に戻ります。
「翻訳仏文法」鷲見洋一著 が、ちくま学芸文庫から、2022年に再刊されました。
この本は文法の解説をしながら、「翻訳」という作業がどんなものかをわたしに教えてくれました。
この本は、「英文翻訳術」安西徹男著、があったから、生まれました。
「翻訳英文法」のオリジナルは、1982年で、
「翻訳仏文法」のオリジナルは、1985年です。
この本で、自分が学んだ「翻訳」とは、わかりやすい日本語に移し変えることです 。
決して、辞典に書いてあるとおりの「熟語」に置き換えたり、構文を利用した定型文に置き換えることではない、ということです。
原文を咀嚼した上で、構文や辞書を踏まえたわかりやすい日本語を生み出すのが、翻訳です。
この「英文翻訳術」が、引き合いに出していたのが、「翻訳読本-初心者のための八章」でした。
アマゾンのレヴューを参考にして、良さそうなので、手に入れました。
この「翻訳読本」は、誤訳、悪訳があふれている現状を嘆いています。
英文を解釈するのに、英文法は必要ですが、英文法の考え方と英和辞典を重視したせいで、おかしな日本語になっていくのが困りものだと。
「翻訳」は、漢文の読み下し文を英語にも応用している、と書いてあるのには、とても腑に落ちました。
中学英語で、日本語として英文の構造を学んだときに、次のような疑問が生まれました。
「ネイティブは、母国語を日本の英文法のあんなやり方で、理解しているのか?」
ネイティブは、主語、動詞のあとに出てくる、節、句、挿入、目的語、形容詞を行ったり、来たりしない、だろう。
英文は左から右へ読む、その原則を守れば良い、と思います。
とにかく文頭から、訳しています、そういうのを「巡行訳」というそうです。
「翻訳読本」では、美しい日本語にすること、そのために、谷崎潤一郎や丸谷才一の「文章読本」を引き合いに出しています。
翻訳で、一番大切なのは、日本語の美しさ、日本語の常識、日本語の想像力を培うことです。
この本が主張することは、40年以上たった現在でも変わりがありません。
「古典」は、いくつもの時代の波を越えていますが、「古い本」は、中途半端な位置づけにあります。
「いつになっても、人が変わらない」ので、「良い本」には、「古い」も「新しい」も無い、のです。
これからも情報を集めて、本を選ぶ力を養って行きます。
2024/01/19追記:
「仏訳仏文法」の著者によると、”「翻訳英文法」の90%が使える”、と書いてありました。どういうことかというと、英文仏文に関係なく、翻訳のテクニックとして共通することがあるのです。もちろん英文法と仏文法は違いますが、日本語に移し替えるときは、考え方、テクニックは同じようです。
コメントを残す